傷の治療は、従来より消毒した後、ガーゼで被う治療が慣習的に行われてきました。しかし、これは逆に傷の治癒を遅らせ、患者さんに無用の身体的苦痛を与えていました。
当院ではすり傷、切り傷、やけどなどを乾かさないように覆うことで、傷本来の治ろうとする治癒力を促進させる”湿潤治療”を行っています。
傷の痛みの原因は乾燥です。傷が乾燥してしまうと傷口からでる浸出液が乾燥してしまいます。実はこの浸出液の中に細胞成長因子が含まれていて、傷を治す働きがあるのです。傷口が常にこの細胞成長因子で覆われた状態に保つこと:湿潤療法こそが傷の自然治癒力を促す正しい治療法と言えるでしょう。
湿潤治療とは、傷口を乾かさないようにフィルムなどで閉塞して傷が治りやすい環境を整え、痛みを軽減して傷跡も残りにくく、傷を早く治そうとする療法です。

湿潤療法のメリット

  • 傷の表面に白血球が集まりやすく、細菌への抵抗性が上る。
  • 傷の表面が乾燥すると痛みがでるが、湿らせているので痛みが出にくい。
  • 密閉されているので、傷のある部分の水につけることが出来る。
  • 創傷被覆材はガーゼのように傷にくっつくことがないので、交換するときの痛みが少ない。

「なつい式湿潤療法®」に準じて、消毒やガーゼを使用せず、創面を乾燥させない創傷被覆材を使用した方法を実践しております。
組織障害性のある消毒薬と消毒液を含む外用剤(イソジンゲル®,カデックス軟膏®,ユーパスタ®など)は使用せず、使用するにしてもワセリン程度にしています。
ただし、深い刺し傷や動物に噛まれた傷の場合は、破傷風や蜂窩織炎などの創感染の可能性があるので、注意深い観察が必要です。
なお、創傷が重度の場合、済生会吹田病院の形成外科と連携しています。